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「今、何してるの?」
池田が聞いた。
「これから髪を乾かして寝ようと思ってたところ。お茶飲んでるの。池田くんは何してるの?」
「俺ももう少ししたら寝る。スポーツニュース見てから。」
池田は言った。
「急に一人になって誰かと話したかったんだけど。別に用事ないからいいよ。明日休みじゃないよね?」
「うん。仕事。休みじゃな…」
言いかけたところで私は言葉が消えた。びっくりしてひっ!と息を吸い込んだ。
「どうしたの?」
池田が不審そうに聞いた。
台所の小窓はこの時期開けて網戸にしてあった。アルミの格子の外枠があるので起きている間は網戸にしておいても無用心ではない。
そこから知らない男が部屋の中を覗いていた。目が合った。心臓をわしづかみにされたようにドキッとして恐怖に凍りついた。
「どうしたの?なんかあったの?」
電話の向こうで池田の声がしている。私は声が出ない。
窓の外の男は私と目が合うとゆっくり窓枠からフェードアウトして消えたようだった。
「外に男がいて覗かれてたみたいなの。
目が合った。」
ショックが解けて言葉が出るようになると、声を落として私は言った。ガタガタ震えてきた。
慌てて家中の鍵を閉めた。
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