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「上がらないから、俺。」
池田はそう言って玄関先に立ったままでいた。
「そこの窓から覗いてたの?」
玄関を開けて台所脇の小窓を眺めてからまたドアを閉めた。
「目が合ったんだよ。ぞっとした。」
思い出してまたゾクッとした。
「来てくれてありがとう。缶ビールでも飲む?」
私は冷蔵庫を開けながら言った。
「いい、いい。何にもいらない。落ち着かないし。」
「門限大丈夫なの?」
ふと心配になって聞いた。
「うん。一応寮長に事情を話してきたから。万一遅れても大丈夫。」
「本当、わざわざありがとう。お風呂も上がってゆっくりしてたのに。しかも悟が帰って来たらこっそり帰ってもらうなんて。ごめんね。」
申し訳なくて本心から言った。
「だってそんなこと聞いたら恐ろしくて誰だって落ち着かないよ。彼氏がすぐ帰ればいいけどさ。一人じゃ怖いでしょ?」
「うん。ちょっとこわかった。」
「だから気にしなくていいよ。」
池田は言った。
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