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私も玄関先に行って池田の隣に並んで座った。
「どんなやつだった?」
「よくわからない。一瞬目が合ったけど男だってことしかわからなかった。すぐにすっと消えたし。」
「気味悪いな。」
「通りがかりにちらっと見てたまたま目が合っちゃったって感じでもないの。じっと覗かれてて私が視線を感じて目を上げたら目が合ったって感じ。」
思い出す度に肌が泡立つような恐怖がはい上がってきた。池田は私の様子をじっと見ていた。
「大丈夫?」
「うん。もう平気。来てくれてありがとう。私ならもう大丈夫だから門限間に合うように帰ってよ。」
悟が帰ったら追い出すようなのが嫌でそう言った。
「もう少しいるよ。彼氏帰るまで。」
池田はそう言って動こうとはしなかった。
「怖かったでしょ。」
質問ではなく私を慰撫するような言い方。小さな子供を母親がなだめる時のような言い方だった。池田は私の手をそっと取ってつないだ。
「怖かった。」
私はつないだ手をそのままにして言った。
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