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「静かに少しずつ死んでいくような気がするの。少しずつ固まっていくようで息苦しい。」
私は言い終わるとグラスを口に運んだ。鈴木は黙ってグラスを手の中で持て遊んでいた。
「これ美味しい。」
私はこの店のオリジナルだというカクテルをもう一口飲んでから言った。
爽やかな香りが広がった後、喉がカッと熱くなる。舌にピリッとスパイシーでビターなテイストが残るのがなんともいえず味わいがある。
「いい店だろ?この辺にしては。」
鈴木が言った。
「うん。知らなかった。マスターがイケメンなのもいい。」
カウンターの内側でマスターが
「ありがとうございます。」
と控えめに笑った。押し付けがましくない、控えめでいてにこやかな感じがまたいい。私はマスターににっこり笑いかけた。
「そのイケメン好きが災いしてんじゃないの?顔で選ぶから。男見る目ある?いい男逃してるんじゃないの?すぐそばにいるのに。」
鈴木が言った。
「そんなこと言うけど鈴木さんだってそこそこイケメンじゃなかったらデートなんてしないもん。」
「そこそこって失礼な!俺は文句なしのいい男だろ?」
「はいはい。自信過剰じゃなければもっといい男ですけどね。」
鈴木も悟ほど万人受けしないにしろ外見は悪くない。悟ほど甘くもなくもっと男っぽい感じだ。
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