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恵は黙って俯いている。それが答えになっていた。絶句した。瞼の裏が真っ赤になって頭は真っ白になった。そしてどす黒いものがふつふつと沸いて来る気がした。
「どういうこと?」
やっとの思いで言葉にした。
「彼と別れて欲しいの。彼もそう思ってるはず。」
恵は言った。
「彼って悟のこと?悟はメグのじゃなくて私の彼だけど。ずっと昔から。」
思わずカッとなった。
「違う。」
恵は煙草に火をつけて長い時間をかけて煙をはいた。
「違わない。今だって悟と一緒にいるのは私。」
私は言った。
「それも違う。悟はほとんど毎日うちにも来てる。ミオのところには着替えに帰るだけ。」
勝ち誇ったように恵は言った。ショックで言葉が出なかった。
「ずっと前からなのは私も同じ。まあ悟ははじめはちょっとした浮気だったみたいだけど。」
恵は言った。
「……いつからなの?」
私はやっと聞いた。
「まだ学校にいる頃からだよ。まあその頃は時々だけど。」
開き直ったのか告白してすっきりしたのか恵は悪びれる様子もなくなっていった。
反対に私の方はどんどんと深みに沈んでいくようだった。
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