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今まで言えずにいたことが栓を抜いたようにあふれてきたのだろう。恵はどんどん饒舌になっていった。
悪意を感じた。長い過去の意趣返しをされているみたいに。恵は明らかに深手を負っている私を目の当たりにして楽しんでいるみたいだった。
恵の言葉は私の耳に入って来ない。上滑りして意味を理解する前にこぼれ落ちていくようだった。恵の言葉が途中から聞こえた。
「……した時の私の気持ち…ミオにはわかんないよ。浮気でもいい、悟といられるならって思った。
ミオは私の悟への気持ちなんてただアイドルに夢中になってるティーンエージャーみたいなもんって思ってたかもしれないけど。」
その通りだったかもしれない。たかをくくっていた。そんなに真剣だとは知らなかった。
「むしろミオの方がずっとキャーキャーしてたと思う。悟と付き合い始めてからでしょ。真剣になったのは。」
恵の目は嫉妬に燃えていた。始めて見た表情に言葉が出なかった。
「それなのに悟はただ家が同じ方向ってきっかけだけでミオと付き合うなんて。その立場が私だったら私と付き合ったかもって言ってた。」
私はただ黙っていた。何も言えなかった。
「どうして私じゃなくてミオなんだろうっていつも思ってた。全然気づかなかったみたいね。それがまたたまらなくて。」
恵が長い間そんな感情を私に対して抱いていたことにショックを受けていた。
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