32.ダメージ

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店を出るとふらふらと歩いた。行きたい場所も行くべき場所もなかった。 心は飽和状態であと少しの衝撃で流れ出してしまいそうだ。ショックの波動が大きすぎて泣くことすら出来ない。 胸がいっぱいであると同時にからっぽのような感覚だった。 好きだった雑貨屋は閉まっていた。行き交う人の流れにも街の空気にも違和感があった。自分の周りだけ酸素の濃度が違うように息苦しい。 気がつくと駅にいた。行く場所なんてどこにもない。帰る家といえば悟と暮らしてきた部屋しかないのだ。虚飾でしかなかった日々。 悟に真偽を確かめたい気持ちとそんなことをして何になるという気持ちと拒絶反応と。気持ちが混乱して定まらなかった。 頭と気持ちの整理をして現実問題に向き合う気力がなかった。逃げたかった。何処かへ。 何処へも行くところがない…… 涙が溢れてきた。
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