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正美と市田は階段を駆け降りていった池田を見下ろし私に視線を戻した。
「どうしたの?」
正美が最初に口を開いた。
「……なんか怒らせちゃったみたい。」
何とも言いようがなくて私はそう言った。
市田の目はいいものを見たというように嬉々として輝いていた。
「お取り込み中だったみたいですね。お邪魔してすみません。」
そう言いながら首をすくめて見せた。絵に書いたような擦れっからしぶりだ。
正美はまだ問いた気に私を見ていたが私は何も話すつもりはなかった。いったい何が言えただろう?
「今日どうする?うち来る?」
正美が聞いた。とても行けるような状態ではなかった。
「ごめん、今日はちょっと都合悪くて。」
私は曖昧な理由で断った。
「わかった。また今度ね。じゃあね。」
「うん。ごめんね。」
正美と市田は4階のバックルームに荷物を取りに行くところだったらしくドアを押して入っていった。
(状況が私の手に負えなくなってきている……)
そんなことを考えながら一人階段を下りてきた。
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