28.批難されること?

5/5
前へ
/35ページ
次へ
私が口をつぐむとほんの数秒の間があって正美が口を開いた。 「私には関係ないかもしれないけど…… 鈴木さんは?」 「鈴木さん。そう。鈴木さんのこともあるし……」 私は曖昧に言いかけた。 「ミオは彼氏もいるし鈴木さんとのこともある。だから池田のこと、気がないなら気をもたせるようなそぶりは残酷だよ。」 正美の言い方にははっきりとした棘があった。 「私気をもたせるようなそぶりなんてしてない。」 なじられたようで心外だった。 「ミオにとっては何気ない普通のことでもあいつはまだ子供だから。」 いくら正美でもそんな決め付けたような言い方にかちんときた。私はちょっとムッとして黙った。 「池田はミオと違って女慣れしてないうぶで不器用なヤツだから。ミオは女子大生の頃から男あしらいなんか慣れたもんでしょ?」 「そんなことないよ!」 思わず強い口調になってしまった。 「とにかく気がないならあいつのこと振り回さないであげて。池田がかわいそう。」 正美の一方的な言い方に腹が立った。でも反論するだけ無駄な気がした。 「正美の気持ちはわかった。でも私振り回してなんかいないしそんなつもりもないから。正美の気持ち知っててこんなこと、ごめん。」 「私の気持ちはもういいの。仕方ないよ。一方的な片思いだから。私もこんなこと言いたくはなかったんだけど。ごめんね。じゃあ行くから。」 正美はそう言って走り去った。私たちは気まずい空気を残したまま別れた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加