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32.ダメージ #2
事実だった。
私と悟が付き合い出してからの長い間、その始めの頃から二股をかけられていた。しかも親友だと思っていた恵にずっと裏切られ続けていた。
恵は長年、私に対して嫉妬と憎しみを感じていたようだ。私だけが何も知らず何も気づかないピエロだった。
倦怠期だと思っていたけれどそもそも悟は私のことを愛したのか?私は愛されたことはなかったのか?
今は消えてしまったけれどかつては確かに二人の間に愛があったと信じていた。
あれは幻想だったのか。
今の状況を思ってではなくかつて悟と私が仲がよかった時を思うと涙が溢れた。
今のようにささくれ立ったような関係ではなく温かいものが通いあった時もあったのだ。
今となってはほとんど思い出すこともなかったことがこの時急に頭に浮かんできた。
私は悟に夢中で二人でいると笑ってばかりいた日々。
そんな思い出の中の悟はいつだって笑顔が輝いていてその眼差しは優しく時に甘く、時には情熱的に燃えて私を見つめていた。
でもまさにその一方で同じように恵にもそうしていたのだろう。
そして恵は悟の子供を身ごもった。
私も悟の子供を生みたいと願った時もあった。今よりもずっと強く悟を愛していた頃。
望んだけれど叶えられなかった願い。私のこれまでの時間は何だったのだろう。
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