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「お、バス来た。」
バスは比較的混んでいた。一番後ろの席が空いていたのでそこに二人並んで座った。
リュウは繋いだ手を自分のジーンズの膝の上に置いた。歩いている間もバスを待つ間もバスの中までも手を離そうとしない。
私はその繋がれた手を見てリュウの顔を見てクスッと笑った。
「何?」
「だってずっと手を繋いでるから。バスの中までも。小さな子供だってバスの中くらい離すんじゃない?」
「いいんだよ。繋いでいたいんだから。」
満足げにリュウは言った。
「力が沸いて来るみたいな気がするんだよ。」
私の耳元で声を落としてそう言った。
私はリュウの顔を見上げた。以前のような孤独で排他的な空気を発散しながらそれでいて実は寂しいと叫んでいるような痛々しい表情はなかった。
リュウの笑顔を見ながら私も微笑み返した。
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