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「帰りは取ってないんだよ。帰りも展望がいいかな?」
リュウは言った。
特急列車がホームに入ってきた。乗車出来るまでしばらく待ってから乗って指定席を探した。展望席を取ってあった。
リュウは事前に計画していたのだ。私はさっきから何も言えなくてただリュウのあとについて列車に乗り込んだのだった。
少し離れた席に乗客がまばらに乗っていた。高齢のグループや中には私達位のカップルもいた。
「こんなに準備してたなら言ってくれないと……」
私の声には多少咎めるようなニュアンスがあったかもしれない。リュウは黙っていた。
列車はまだホームに停車中だ。徐々に人が乗り込んでくる。幸いなことに近くにやかましいグループはいなかった。
「宿泊も取ったの?」
私はちょっと身構えるように聞いた。
「日帰りも出来るよ。キャンセルすればいいことだし。もしそれを気にしてるなら。俺は外泊届出してきたけど。」
リュウはそんなことはなんでもないというように言った。
「言って欲しかったよ。泊まるつもりがあったなら。何も用意してないし。」
「大丈夫だよ。今コンビニで何でも売ってるよ。」
リュウはすべての答えを用意していたみたいになめらかに言った。
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