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列車を降りると海の匂いがした。潮風の街を散策した。
私たちは時に笑いあい、時に見つめ合った。見つめ合う時に言葉はいらない。ただ互いを見つめ合えばそのたびに恋をしているのがわかる。
「着いたよ。」
リュウはこの辺りで評判のホテルのゲートの前まで来て言った。そろそろチェックイン出来そうな時間だった。
「ちょっと疲れたでしょ。」
リュウは言った。
「ちょっとね。」
真夏日だった。ぶらぶらと散歩していただけとはいえ確かにちょっと疲れた。
「チェックインして部屋でちょっと休んでから買物しに行こう。」
リュウは言った。
「うん。」
案内された部屋はオーシャンフロントの和洋室だった。大きな窓から水平線がくっきりと見える。
「わぁ、きれい。」
月並みな表現だが思わず口から出た感想だった。
客室係が簡単な説明を終え立ち去るとリュウが背中から私を抱いた。首筋にかかる息が熱くてくすぐったい。
「リュウ、待って。いきなり過ぎだよ。」
私は笑ってかわした。
「いいじゃん。ケチ。ずっと我慢してたんだから。」
そんな風に言いながらもリュウは笑っていて部屋の中をあちこち見回し始めた。リュウは靴を、私はサンダルを脱いで畳に足を投げ出した。
「ああ、気持ちいい。涼しいし。」
私は言った。
「部屋もきれいだしなかなかよかったな。」
リュウも満足そうに言った。
「一休みしたらビーチに降りてみよう。」
リュウが言った。
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