35.潮風

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浜辺でじゃれあって騒いだあと海を眺めながら並んで座った。リュウが眼鏡を外して着ているシャツでレンズの汚れを拭った。 「ちょっとこっち向いて。」 私は眩しそうに目を細めているリュウの顔を自分の方に向けた。 「本当にかわいい目なんだよね。眼鏡外すと。」 眼鏡を選んだ時に初めてリュウが眼鏡を外したのを見てそのギャップに驚いたものだ。今もその目にひきつけられた。 無防備でセンシティブで感情を鮮やかに映してしまう目。今その瞳は穏やかな色で私に微笑みかけていた。 リュウはそのまま体の向きを変えて私の膝に頭をのせた。私はその唇にそっとキスをした。 「もう一度。」 リュウが言った。私はもう一度キスをした。リュウは満足そうに微笑んだ。ふと不安になる。この恋もいつかは色褪せてしまうんだろうか…… 「ミオ?」 「うん?」 「さびしそうな目はしないで。ミオがつらそうだと俺はたまらなくなる。」 「うん。」 今この瞬間の幸福を享受しよう。私は微笑んだ。 「ミオ……」 「なに?」 「ミオが世界への扉なんだ。俺の。ミオが俺を殻から出して扉を開けてくれたんだ。」 私はリュウの髪を撫でた。 「大好き。」 私達はまたキスをした。
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