36.加速

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海岸通りを歩いてみたけれど海は真っ暗で何も見えない。それでも波の音と潮の香りがして海辺の街の情緒があった。私の肩を抱いて歩きながら 「寒くない?」 とリュウは聞いた。 「平気。」 私は答えた。バッグの中で携帯が振動した。ぴったり寄り添っているのでリュウにも伝わる。 「出ないの?」 私は携帯を取り出して確かめた。悟だった。 「いいの。」 私は言って電源を切った。リュウが立ち止まった。 「本当に俺でいいの?後悔しない?俺、彼氏みたいに大学も出てないし何の取り柄もないよ。」 私の体に回していた手をジーンズのポケットに突っ込んでリュウは言った。 「後悔なんてしない。取り柄がないなんて言わないで。リュウに惹かれずにはいられないの。リュウは自分の魅力がわからないのね。」 私はジーンズに突っ込んだリュウの両手を取って自分の胸にあてた。 「わかる?私の鼓動。」 私はそのままリュウの顔を見上げた。 「鼓動のたびにどんどんリュウに惹かれていくみたい。」 私はリュウの首に両腕を回してキスをした。
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