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私はわざとゆっくり手荒いとうがいをした。それが悟の神経を逆なでするのはわかっていた。
そのままシャワーでも浴びてしまいたいところだったがそうはいかないのはわかっていた。だから洗面台の前で鏡に映った自分の顔を見ていた。
少し疲れているが悪くない。そう思った。そう思えるのはリュウのおかげだった。リュウとの恋が私を綺麗にしていた。
私は意味もなくヘアブラシを手に取ってブラッシングした。
「こっちへ来て座れ。」
悟が部下にでも命令するかのようにそのよく通る声で言った。
私はブラシを置いてゆっくりとした動作でリビングのカウチに腰を下ろした。悟とは目を合わせなかった。
「誰といたのか聞いてるんだよ。」
低く凄みを効かせるように悟が言った。
「そんなこと私に詰問出来た立場?悟は8年間私に何をしてきたのか考えてから私を問い詰めてよ!
恵はどうしてるの?今、この瞬間。恵から爆弾落とされた日だってとうとう帰って来なかったじゃない!恵をいたんでしょ!問い詰めるのは私の方よ。」
いったん口から言葉が飛び出すと次々と罵りの台詞が浮かんできた。私は容赦なくそれらを浴びせた。悟とこんな争いをするのは久しぶりだった。
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