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「何があったの?彼氏と」
食事をしながらリュウが聞いてきた。
「え?」
急な質問だったので一瞬何のことか答えに詰まった。
「別に言いたくないなら聞かないけど。泣いたって言ってたから旅行中もずっと気になってたんだけどさ。」
リュウの目は気遣わし気な表情だ。少しの沈黙のあとで私は言った。
「あの日、昔の友達と久しぶりに会った日があったでしょう?」
「うん。」
「あの時彼女がカミングアウトしたの。悟と付き合ってるって。」
「え?」
リュウは絶句した。
「しかもずっと昔から。私と悟が付き合い出したばかりの頃からずっと。 つまり二股だったってわけ。長い間。」
私は箸を置いて弱々しく微笑んだ。
「なんだよ、それ。」
リュウは私をじっと見た。
「馬鹿みたいでしょ?」
私は乾いた声で軽く笑った。
「馬鹿みたい。私、何にも気づかなかったの。告白されるまで。私だけ何も知らなかった。本当に馬鹿。」
思い出すと悔しくて情けなくて涙が滲んだ。リュウはそんな私をじっと見ていた。
「とどめはね、子供が出来たから別れてくれって。」
言ってしまったとたんにポロッと涙がこぼれた。リュウは私の手を取ると
「出よう。」
と言って店から出た。
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