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暗闇の中で携帯の光だけがぼうっと光っていた。やがてその光も消えて真っ暗闇になった。
私は思考停止のままぼんやりとリビングのラグに座っていた。頭の中にはまだ今の会話と悟の声がリフレインしていた。
涙がじわりとわいてきて喉元が苦しくなった。情とは厄介な感情だ。もう愛情とは言えないのに。
暗闇に目が慣れてきた。そして和室との境にリュウがのっそりと立っているのを見て私はびくっとなって反射的に飛びのいた。
「びっくりした。声くらいかけてよ。ああ、ホントにびっくり。電話で起きた?起こしちゃった?ごめんね。」
私は立ち上がった。リュウは暗闇の中で私を抱きしめて言った。
「ごめんね、驚かして。」
「リュウ……」
「俺、いつのまにか寝ちゃったんだな。せっかく新居での初夜だったのに。」
リュウは私をくるむように抱きながら耳元に囁いた。耳に残る悟の声を拭うようにリュウの胸に顔をつけた。
「立ち聞きしてた、俺。行かないで。彼のところには戻らないで。」
リュウの胸から鼓動が聞こえる。私はその鼓動を聞きながら
「愛してる。」
と呟いた。
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