46.真夜中の電話

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和室に布団を敷いてから思い立って兄に電話をした。 「私。…うん。なんとか。まだ何もないけど……とりあえずは。印鑑を返さないとね。」 「後でいいよ。お母さんに今はそっとしとけって言っておく。落ち着いたらきちんと話したほうがいいぞ。」 「ありがとう。それから今までいろいろ、ごめんなさい。」 今回のことで兄は本当に味方になってくれた。正直とても意外だったけれど兄の存在は頼りになった。 「それよりヤツは大丈夫なのか?探してるんじゃないの?」 「居場所は当分教えないつもり。この前みたいにお母さんとお父さんのとこに余計なことを吹き込みにいきそう。それが心配。」 「そうか。困ったな。あまり刺激しないように。困ったことになりそうなら電話してこいよ。」 「ありがとう。また連絡するね。おやすみなさい。」 私は電話を切ってしばらくそのまま台所のシンクに寄り掛かりぼんやりと立っていた。
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