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「違う…あの頃はただ…」
私の言っていることなど正美は聞いていなかった。
「私、馬鹿みたい。」
正美の声には蔑むようなトーンが混じっていた。
「そうとも知らずよりによって当事者のミオに池田のこと相談してたなんて。」
「違うよ…あの頃は…」
「どこが違うって言うの?
いつからなんて関係ないでしょ?
結局、裏切られたのは同じなんだから!」
抑えていた感情が爆発したようだった。その目には涙が滲んでいた。
私は何も言えずに黙ってしまった。
「馬鹿みたい…本当に。
私のこと上から目線で馬鹿にしてた?哀れんでた?」
正美は私をキッと睨んだ。
「え?どういう意味?」
私はびっくりして思わず聞いた。
「同情してたの?
一方では池田と恋愛しながら私にはなんて言ったか覚えてる?」
正美は自転車のハンドルをギュッと握っていた。
力が入りすぎてその手が白くなって小刻みに震えていた。
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