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「あいつがいなくて私がどんなに寂しいか。
抜け殻みたいにからっぽなのに二人の子供の面倒見なきゃいけない。
現実は私に泣くことさえゆるしてくれない。そんな私の気持ちなんかわかりっこないでしょ!
私がこんなこと言ったって、ミオは、あんたには池田がいるんだから!
池田が抱いて慰めてくれるんでしょ!」
半泣きしながら正美がヒステリックに怒鳴った。
私を睨んでいた正美の視線がふいに動いた。
私は振り返ってその視線の先を見た。
社員通用口のドアの外でリュウと中尾とほかに数人の男女が興味深げにこちらの様子をうかがっていた。中にちらほらとリュウを見ている人もいるところを見ると話を聞かれていたのかもしれない。
正美は一瞬、リュウに向けてじっと強い視線を送った後、黙って自転車を出して去っていった。
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