48.復帰 #2

2/3
前へ
/35ページ
次へ
リュウが事務所の前を通り過ぎて、一瞬、私に向かってこれ以上はないというような笑顔を見せた。 その笑顔だけで私との関係がバレるというものだ。 私は焦ってサッと素早く周囲を一瞥した。幸いなことに誰も笑顔に気づいた人はいなかったようだ。 リュウはもう一度、同じように笑顔を見せて走り去っていった。 「そういえば川島さん、今度、埼玉の方に新店がオープンするんですって。」 金子が話し掛けてきた。 「そうなんですか。」 「まだはっきり発表になったわけじゃないから伏せておいてね。」 金子は前置きしてから続けた。 「社員はわりとたくさん異動があるらしいですよ。マネージャーとか本部の方とか。」 私が欠勤している間に出てきた話のようだ。 リュウは何も言っていなかった。無関心なのだ。わからなくはない。リュウは自分はまず異動はないと思っているのだろう。関わりがあるとすれば上司のマネージャーがかわる位だと。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加