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リュウが事務所の前を通り過ぎて、一瞬、私に向かってこれ以上はないというような笑顔を見せた。
その笑顔だけで私との関係がバレるというものだ。
私は焦ってサッと素早く周囲を一瞥した。幸いなことに誰も笑顔に気づいた人はいなかったようだ。
リュウはもう一度、同じように笑顔を見せて走り去っていった。
「そういえば川島さん、今度、埼玉の方に新店がオープンするんですって。」
金子が話し掛けてきた。
「そうなんですか。」
「まだはっきり発表になったわけじゃないから伏せておいてね。」
金子は前置きしてから続けた。
「社員はわりとたくさん異動があるらしいですよ。マネージャーとか本部の方とか。」
私が欠勤している間に出てきた話のようだ。
リュウは何も言っていなかった。無関心なのだ。わからなくはない。リュウは自分はまず異動はないと思っているのだろう。関わりがあるとすれば上司のマネージャーがかわる位だと。
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