51.渦中の人

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(みんな知ってるんだ…) 市田に言われたことよりも並木まで事情を察して気を配ってくれたことが意味する事実にあらためて打ちのめされた。 急に食欲が失せた。 「逃げることないのよ。悪いことしてるわけじゃないんだから。ああいう子には一歩もひいちゃダメよ。」 並木は小声でそれだけ言うとすぐに話題を変えた。 食べる気がしなくなった食事のトレイを下げてコーヒーでも買いに立とうと思っていると並木が脇で誰かを手招きしていた。 目を上げると食堂の入口にリュウがいた。 リュウはいつも昼食は一人でさっと済ますか、商品管理のアルバイトの男の子と一緒に来てさっと済ます。 以前は、正美がいて手招きすれば正美の脇でほとんど話もせずに黙々と食べて、食べ終わるとすぐに立っていったものだ。
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