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「ごめん、待った?」
正美は急いだ様子で社員通用口から出てきた。
「全然。今来たんだよ、私も。」
正美は自転車置場に歩き出した。
「あまり時間ないんだけど立ち話でいいかな?アヤのお迎えがあるから。」
正美が自転車の鍵をバッグから出しながら聞いた。
「あれ?自転車は?」
脇に立っている私に向かって不審そうな表情を見せる。
「引っ越したの。」
私は何からどう話そうか思案しながら慎重に切り出した。
「実は具合悪くて休んでたんじゃないの。悟と別れたの。」
正美は驚いた顔で私を見た。
「そうだったの…」
「うん。」
私はしばし黙った。正美は私の話を待っている様子だ。
「急だったんだけど、いろいろあって…」
どう話すべきかまだ心が決まらなかった。でも隠すのはやめようと思っていた。
「どこへ?どこに越したの?」
「小杉の方。だから電車なの。」
「そっか…」
会話には微妙な緊張があった。それを正美も感じているらしくいつもの軽口が出なかった。
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