62.ブルジョアジー

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玄関のオートロックの暗証番号を押して中に入った。 「お母さん。私。」 靴を脱ぎ家にあがりながら玄関から声をかけた。振り返って身を固くしながら玄関ホールに立ったままのリュウにも声をかける。 「上がって。」 「うん。」 私はスリッパを出して履き、リュウにもすすめた。 母が玄関にやってきてリュウを見た。 「あら、あなたもいらしてくだすったの?いらっしゃい。どうぞ、お入りになって。」 母はそういいながらリュウの頭から足元まで、ほとんど気のせいかと思うほど素早くさっと視線を這わせた。 「はい。失礼します。」 リュウはスリッパに履き変え部屋に上がりながら私の後についてきた。 「俺、こんな格好で来ちゃったけどまずかったかな。スーツでくればよかったよ。」 リュウは小声で言った。 「大丈夫だよ。病院に行くんだから。スーツなんてかえっておかしい。」 私は言いながらリュウを客間のソファーに誘導した。 「ミオ、ちょっと来て。」 母が呼んでいた。 「ちょっとここに座って待ってて。」 私はリュウに言ってから母のところに向かった。
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