63.あてつけ

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「あら、私ったら。テツオのお見舞いに来たんだったわね。で、どうなの?」 伯母はやっと父の方に顔を向けた。 「わざわざすみませんね。姉さん。暑いとこ来なくてもよかったのに。たいしたことないんだよ。寝てれば治るって。 座ったら?」 私は伯母にパイプ椅子を出してすすめた。 「ありがとう。 ミオちゃんはお相手はいらっしゃらないの?そろそろでしょう?」 私が答えるより先に母が答えた。 「それがこの子、どうも要領が悪いようで。 お義姉様、どなたか良い方いらっしゃらないかしら?ぜひご紹介していただきたいわ。」 私の脇でリュウが身を強張らせるのがわかった。 「あら?そうなの? そちらの方は?」 伯母がリュウを見た。 リュウはかろうじて 「はじめまして。池田です。」 というのがやっとだった。
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