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もうこれ以上、ここにいる理由はなかった。もちろんいたいとも思うはずもない。
リュウは表面上、平静を装ってはいたが、ダメージを受けているのは明らかだった。
これ以上いたら私も我慢出来るかどうかわからなかった。
私は今度こそタイミングを見計らって帰ることにした。
「お父さん、私たちそろそろ失礼するわ。顔だけ見たかったから。お医者様と看護師さんの言うことをちゃんと聞いてね。」
父に声をかけた。
「うん。わかった。
うちに戻ったらまた来なさい。」
父が言った。
「伯母様、お母さん、帰ります。伯母様、お見舞いありがとうございました。残念ですが私はこれで失礼致します。伯母様はごゆっくりなさって。母も寂しいでしょうから。」
私はそう言った。
母は私が帰ることに異存はないようだ。むしろリュウにはこの場から早くいなくなって欲しいのだろう。私たちが帰ると言って心なしかホッとしているようにも見えた。
「あとで夜にでも電話してちょうだい。」
母は言った。
「送っていってやるよ。」
兄が言ったが私は丁重に断った。リュウを解放してあげたかったし、自分も解放されたかった。
「いいの。大丈夫。ありがとう。ゆっくり散歩しながら帰るから。レイさんと食事でもしたら?」
私は儀礼的にレイにお辞儀をした。今日でこの人が決定的に嫌いになった。
リュウは私の後について皆にお辞儀をしながら病室をあとにした。
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