63.あてつけ

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病室を出るとすぐに私はリュウの手を取った。 リュウはいつものように力強く握り返しては来なかった。 「ごめんね。」 私はリュウに言った。 「ううん。」 リュウは私の方は見なかった。考え込んでいるような様子だった。 バスはほぼ10分に1本くらいのペースであり、ほとんど待たずに乗れた。乗客はまばらで私達は一番後ろの座席に並んで座った。まだ残暑が厳しく、空調の効いた車内に入ると涼しくて生き返る。 「ふぅ。」 リュウが大きく息を吐いた。 「あんなあてつけがましいことを言うなんて。 せっかくこんなところまでお見舞いに来てくれたのに。来なければよかった。 嫌な思いさせちゃってほんとにごめんなさい。」 私は言った。 「うん。」 リュウは「うん」としか言わなかった。リュウを傷つけてしまった。一緒に来たことをつくづく後悔した。
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