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病室を出るとすぐに私はリュウの手を取った。
リュウはいつものように力強く握り返しては来なかった。
「ごめんね。」
私はリュウに言った。
「ううん。」
リュウは私の方は見なかった。考え込んでいるような様子だった。
バスはほぼ10分に1本くらいのペースであり、ほとんど待たずに乗れた。乗客はまばらで私達は一番後ろの座席に並んで座った。まだ残暑が厳しく、空調の効いた車内に入ると涼しくて生き返る。
「ふぅ。」
リュウが大きく息を吐いた。
「あんなあてつけがましいことを言うなんて。
せっかくこんなところまでお見舞いに来てくれたのに。来なければよかった。
嫌な思いさせちゃってほんとにごめんなさい。」
私は言った。
「うん。」
リュウは「うん」としか言わなかった。リュウを傷つけてしまった。一緒に来たことをつくづく後悔した。
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