63.あてつけ

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こんなテンションではどこへ行ったところで楽しめないだろうと思った。リュウはどこへも行きたくないだろうと。 とりあえずバスを降りて最初に目についたうどんと蕎麦のチェーン店に入って空腹を満たした。食べる間も二人とも黙々と食べ、さっさと会計をして駅に行った。 帰りの電車の中でリュウは寝てしまった。 そんなリュウを見ていたら私もたまらなくなってきた。泣きたかった。行きの電車では、リュウは緊張もしているようだったが必死で自分を奮い立たせようとしているのが感じられたから。緊張しまいとするあまり、痛々しいくらいテンション高めにはりきっているように感じられたから。 今、隣で意気消沈して眠ってしまったリュウを見るにしのびなくてあらぬ方を向いた。涙がこぼれないように目尻をそっとぬぐった。
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