62.ブルジョアジー

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「ごめん、明日行けない。デート。」 電話を切って私はリュウに言った。 「どうしたの?誰から?」 「お兄ちゃん。お父さんが入院したって。」 私が言うとリュウは絶句した。 「大丈夫なの?行かなきゃ。」 「うん。明日行ってくる。 急性の胃腸炎らしい。心配な状態じゃないけど過労でしばらく安静にしないといけないみたい。」 「そうか。それなら俺も行くよ。」 「リュウ…」 不安だった。 お互い居心地の悪い対面だ。 ましてこんな時に… でも、いいチャンスではある。長居しないで顔だけ出して直ぐに帰ればいいのだ。どうせ兄もいることだし、兄の彼女も来るに違いない。キャリアウーマンだが、こういう時には真っ先に駆け付け、てきぱきと采配を振るう人だ。 リュウを連れて来いと言われてるし、一人で行ったら何と言われるか…リュウは仕事で休めないと言えば済むことだけど… 私は迷っていた。 顔に出ていたのだろう。 「俺、行かないほうがいいの?」 私は即答出来なくてリュウの顔を見た。 「やっぱり行く。挨拶だけはしておきたい。」 リュウはそう言った。
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