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私がずっと黙っているので小野田は一方的に話し続けた。
「赤の他人がこんなにそっくりなんてありえないもんね。」
小野田は微かに、ほとんどそれとわからないほど微かに微笑んだ。私は体の芯から冷えていく気がした。
「あなたとすれ違って、最初はただ驚いたけど次の瞬間、頭がさーっとクリアになっていく気がして急にずっと思い出すことがなかったパパの顔が浮かんできたの。すれ違ったあなたの顔が頭に残っていて、それがグラデーションみたいにパパの顔になった。それで何もかもに気づいた。そしてこれは啓示に違いないと思ったの。
だからあなたにもう一度会う必要があると。必ず会えるはずだと思ってた。そうしたらあなたは私が昔働いてた職場にいるって…それも聞き回ったわけでもなく偶然鈴木さんから私の耳に入った。
やっぱり私たちは出会うべくして出会ったのよ。」
確かにあの出会いは衝撃だった。私はリュウの事で動揺したが私の本能はもっと重大なことを警告しようとしていたのかもしれなかった。
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