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小野田は傷ついたような顔をしていた。傷ついたのは私のほうだと言ってやりたかった。
歓迎されるとは思っていなかったはずだ。姉妹だとわかってもう少し優しく接してくれるとでも思っていたのか。
リュウの元カノが自分と血が繋がっていようとは。私はその存在にどれほど胸を痛めてきたか。小野田はリュウにとりついた亡霊のような存在として私を悩ませてきたのだ。ついさっきまでそう思ってきた。リュウを巡る話で対面するものだと思っていたのだ。
それをいきなり姉妹だと告げられてどうやってそれを受け入れろというのだ。
私は黙って席を立とうと腰を上げた。
「待って。」
小野田が慌ててバッグからペンを取り出し手帳のページを破って連絡先を書いて寄越した。
アドレスと電話番号、住所まで書いてある。
「お願い。」
小野田はまた言った。
メモを突き返すことは出来なかった。私はぼんやりとそこに書かれた住所を見ていた。同じ沿線上のすぐ近くの住所。
小野田の言うとおり、出会うべくして出会ったのかもしれない。望むと望まざると。何かに導かれるように私と小野田は出会ってしまった。
私にとってはリュウによって意識することになった存在だけれどもっと根源的なつながりがあったわけだ。
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