6人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんで俺に連絡しないんだよ。」
店を出たところでリュウが言った。怒っているようだ。
「だってあの子がもう店に来てるって聞いたし。
リュウはどうして?大倉くんから?」
「うん。急いできた。」
私たちは駅までの道を歩いた。最近ではリュウは小杉にいることのほうが多いのでこうして一緒に帰ることもずいぶん減った。
リュウは静かに私の手を取って自分の指を絡めてからぎゅっと力を入れた。
しばらく二人とも何も話さずに歩いた。
リュウと手を繋いでいると少しずつ気持ちが落ち着いてくると感じた。
「あいつなんだって?」
リュウが聞いた。
私はしばらく黙っていた。
「どうしたんだよ?」
リュウがまた聞いた。
「もう少し待って。まだ話したくない。
早く帰ろう。」
小野田美保の顔とさっきの写真が頭に浮かんできた。
それについて考えるのを頭が拒絶していた。頭をからっぽにしたかった。
最初のコメントを投稿しよう!