72.血と膿

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19時。 海沿いの町は風が強く、時折その風にのって潮の匂いした。 薄手のコートを着ていたが列車を降りると少し寒く感じた。 改札を出て指定した場所向かった。小野田は先に来ていた。 小野田は身なりにかなり気を遣うタイプらしいことが感じられた。身につけているものはどれもセンスの良さを感じさせるものばかりで、なんとも受け入れがたいことに私の趣味と似ていた。 「ごめんなさい。」 待たせたことを詫びながら思わず苦笑した。服装の趣味が似ているどころではない。 小野田も髪を切っていた。しかもまた私と似た感じのスタイルに仕上がっていた。これでは示し合わせたようなものだ。 馬鹿らしくなって笑えてきた。 「髪型…」 小野田が言った。 「うん。切った。あなたもね。」 私は家の方角に向かって歩きはじめた。
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