72.血と膿

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「やっぱり家には行かないほうが良くない?」 おずおずと小野田が言い出した。 「もう行くって言った。」 私は突き放すように言った。 「私のこと…私を連れていくって言ったの?」 「あなたのことは言ってない。お客さんを連れていくって言った。私の新しい彼氏か何かだと思ってるらしいけど。」 小野田の足が止まった。 「いいのかな?」 「いいわけないじゃない? でもいまさら尻込みしないでよ。お願いだからお父さんに会わせてって言い出したのはそっちじゃない?」 「そうだけど。 家にまで押しかけなくても外でパパだけに会うとかすればよかったんじゃないかって。」 「そうかもね。」 私は素っ気なく言った。 「波風立てたくないし。」 小野田のその一言にかちんときた。 「波風立てたくない?」 私は振り返って小野田をひたと見据えながらおうむ返しに言った。 「もう十分波風立ってるわ。 私とリュウはあなたのせいでこじれてしまってる。 いまさらいい子ぶらないで。歓迎されるなんて期待しないでよ。」 「歓迎されるなんて思ってないけど。」 小野田は泣き出しそうな顔で言った。
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