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そんな小野田の顔を見ると私ばかりが悪者のようで余計に苛々した。私はしばらく小野田のほうを強い目で見遣ってから前に向き直りまた歩き出した。
「この前話そうと思ったことだけど。」
前置きして小野田が話し出した。
「こんなふうに押しかけてもあなたのお母さんに申し訳ないとは思わない。いろいろ聞いたから。うちの母親はあなたのお母さんのこと知ってる。あなたの母親も私の母親のことは知ってるって。」
「知ってるって、存在にうすうす気づいてたってことじゃないの？」
母の性格からは『うすうす気づいている』ことを追及しないで放置するなど考えにくかったけれどわからない。
「そうじゃなくて。」
小野田は言った。
「昔から知ってるってこと。ずっと昔から。」
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