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「ああ…」
妙に納得したような顔で小野田は口を開いた。
「それはリュウイチが納得しないまま別れちゃったから。
それに私、ほかにも好きな人がいて。リュウイチよりも…リュウイチは違ったから。いつも私だけ。だから…振り回しちゃって。
私がその人よりリュウイチを愛せればよかったのに。」
最後はまるで独り言のようだった。
「ごめんなさい。私、何言ってんだろ。
とにかく終わったことだから。リュウイチもわかってるはず。」
慌てたように小野田は言った。
「そうか。今、同じ店にいるし気にするよね、普通。
でも本当、なんでもないから。リュウイチは怒ってるみたいでほとんど話したりもしないし。
ホントにあなたたちの間を邪魔するようなつもりないから。誤解しないで。偶然なの。あの店で働き始めたらリュウイチがいてびっくりしたんだから。」
リュウとの再会について旧友を懐かしむような言い方で言った。
「リュウは…リュウの方はそんなに割り切れてなかった。
体調までおかしくなって…
リュウがかわいそう。」
胸が痛くなってきた。再会後も彼女は鈍感さという棘でリュウを刺し続けたのだ。リュウはちくちくとした棘で刺されるたびに血を出していたに違いない。
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