70.招かれざる者 #2

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小野田は最初こそ緊張したような様子だったものの、話すにつれ馴れ馴れしくなっていくようでそれがまた癇に障った。馴れ馴れしいというか、必要以上に親しげとも言うべきか。 「リュウのことじゃないなら何の話ですか?」 私は早くこの場を去りたくて言った。 小野田は急にトーンダウンするようにおとなしくなった。下を向いてバッグの中をガサゴソと掻き混ぜると意を決したように一枚の写真をテーブルの私の側に滑らせた。 「何?」 私は聞きながら写真を手にした。がつんと頭を殴られたような衝撃に襲われた。立ちくらみの時のように意識が引いていくような気がした。何も話すことが出来ないまま手にした写真を凝視し続けた。顔を上げることが出来なかった。その写真の意味することが恐ろしくて小野田の方を見ることが出来ない。それでも彼女がそんな私の動転ぶりを、動揺した私のどんな一挙一動をも見逃すまいと警戒心の強い猫のような目でじっと観察しているのがわかった。目を合わさずともその視線が突き刺さっているのを感じた。
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