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「私、なんとなく覚えてる。
今の父親と母が一緒になってからは川島のおじちゃんって呼びなさいって何度も直されたの。パパじゃなくて。川島のおじちゃんは本当はパパじゃないって説得された。でも子供心にも抵抗があった。」
小野田が話していた。聞きたくなかった。それでも麻痺した心は耳をふさぐ気力もなかった。
「でも何かおかしいと思うようになってたの、その前には。どうしてパパは一緒にいないの?って母に聞いた。母はお仕事が忙しくて大変だから別のところにおうちがあるのって言ってた。
私はパパが大好きだったからさびしくて。パパが来るのをどれほど待ち望んでいたか…
ある日、母は新しいパパが出来るって言い出した。だからもうパパは来ないってね。これからは新しいパパを本当のパパだと思ってそう呼びなさいって言われたのよ。」
小野田はテーブルから写真を取り上げて無表情に眺めていた。
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