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「ちょっと待てよ。」
兄が私を制して言った。
「なんでお前がそいつを連れて来るわけ?」
訳がわからないという顔つき。無理もない。私だってあの店で小野田とすれ違ってから、歯車が目茶苦茶に回転している時計の内部に放り込まれてしまったように世界が混沌としていた。
「いろんなことがあって…何から話したらいいかわからないけど。」
私は自分の抱えているものを吐き出してしまいたかった。相談してアドバイスが欲しかったわけではない。それでも兄に話し始めた。
「その子とは近所で偶然すれ違ったの。
あまりにも自分に似てるからぎょっとした。」
「うん。」
兄は私が腰掛けているベッドの向かい側に椅子を持ってくると私に向き合うように座り長い脚を前に投げ出した。それから心持ち前傾姿勢になり私が次に話し出すのを待っていた。
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