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父はそのまま入浴してしまったようだった。
「何なんだよ、全く。」
兄はリビングの母の向かい側のソファーにどかっと座った。
そのまま母の様子をじっと見ていた。母は何時間も同じ姿勢のままでほとんど身じろぎもしていないかのようだった。
「大丈夫?」
兄は母に声をかけた。
母は夢から醒めたように兄を見た。
「ああ、トオル。
来てたの…」
「来てたのじゃないだろ?もう小一時間以上前からいるよ。大丈夫かよ。」
兄は母の顔をまじまじと見ながら言った。
「お腹空いてるでしょう?キッチンにも冷蔵庫にもいろいろあるから食べてちょうだい。
お母さん、ちょっと…用意してあげられそうもないわ…なんだか…疲れて。」
語尾が涙声になっている。
「いいよ。そんなこと。」
兄はビールを取りにキッチンへ立っていった。
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