73.負の遺産

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兄は缶のままビールをごくごくと飲んだ。 「腹減った。」 独り言のように言ってつまみになるようなものをキッチンから取ってきてダイニングに座った。 私も兄の向かい側に座った。 兄は私に対しても怒っている様子だった。 昔からそうだった。 私が今日のようにスタンドプレーをして揉め事が起きると兄は一貫して傍観者の立場を取ってはいたが、ことを荒立てて騒ぎ立てた私を突き放したように冷たい目で見た。 今もちょうどそんな様子だった。 こんな大騒ぎをしなければいけなかったのか?自分まで呼ばれる必要があったのか?もっとほかのやり方はなかったのか?と思っているに違いない。 そして悔しいことに兄の意見はいつも正論だった。おそらく今日のことも。 そう思いながら兄の向かいに座っていると、何とも居心地が悪く落ち着かなかった。
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