73.負の遺産

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父は黙って小野田を連れて家の方に歩きだした。 私は何も言わず父の後ろからついていった。 玄関で小野田はまた入ることを拒んだ。 「中に入りなさい。 このまま帰すわけにはいかないんだから。」 父が言った。 「もういい。いいの。もう気が済んだ。」 小野田は言った。 頑として家の中に入ろうとしなかった。 父はその場でしばらく思案していたがやがて言った。 「わかった。 そこで待っていなさい。」 父は家の中に入っていった。 母は父を睨んでいたが何も言わなかった。 父は上着を手に持つと 「送っていこう。」 と小野田に言って車を出しに車庫に向かった。 小野田は黙って父の後に従っていった。
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