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私は母と気詰まりな空気の中に取り残された。
母は呆けたような顔でリビングのソファーに座り込んでいた。
私の方は見ようともしなかった。
私は初めて母を哀れに感じた。こんなふうにむき出しの母の表情はあまり見たことがなかった。いや、記憶にある限り初めてと言っていい。ほとんど見たことがなかった。
そこにいる母は長年身につけ続けたプライドというコルセットが壊れて、無残に弛緩した体を持て余して呆然としている孤独な老婦人のようだった。いつも従順な執事にも裏切られ途方に暮れているような。
私はそんな母を見るに忍びなくてダイニングの椅子に座った。
急に罪悪感がどっと押し寄せた。母と目を合わせることができなかった。
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