73.負の遺産

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しんとした部屋の中で私の携帯の着メロが場違いに鳴り響いた。兄からだった。 「メール見たけどどうかしたか?急に。」 「ああ。うん。ちょっと…」 私は口ごもった。ただでもこんな話をどう切り出せばいいかわからないのに、見えるところに母がいては話せるはずもない。 「俺も会うべき人って誰だ?お前の彼か?来てるの?」 「リュウじゃない。会うべき人っていうか…帰っちゃった。」 「なんだよ、全然わからないよ。俺行ったほうがいいの?」 「ちょっと電話では話せない。」 私は口をつぐんだ。 兄もしばらく黙っていた。 「今どこ?」 「うちだよ。実家。」 「わかった。もう少ししたら出るから少し遅くなるよ。」 「わかった。」 電話が切れた。 携帯にはリュウから着信とメールが何回も来ていた。
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