サクラ散る

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数ヶ月前―― WC決勝戦。 私達洛山vs誠凛高校。 黒と火神君に敗れた赤が調子を崩し始めた。 正直言って、酷かった。 シュートも決まらずパスも無理矢理。 連携なんて話じゃなかった。 赤の彼女である後輩の悠夏も、 ユウカ「あか、し……?」 と、まるで別人を見るような目で、彼を見ていた。 案の定監督がT.O.を出した。 シロガネ「…選手交代だ、赤……」 チヒロ「…ちょっと待ってください。」 選手交代を告げようとした監督の言葉を遮ったのは赤に黒の代わりとして見入られた、同級生の千尋だった。 赤の前に立った彼は、一言、 チヒロ「無様だな。」 と、そう言った。 チヒロ「屋上で初めて会った時とは別人だ。つーか、誰だお前。」 気に入らなかったから文句を言った、そんな理由で赤に無様なんていう彼。私の、初恋の人でした。 結局そのあと、昔の赤が戻ってきても誠凛には負けてしまった。けれど、不思議と悔しさはなかった。 それから私達は卒部し、今日はついに卒業式を迎えていた。 私も千尋も大学は同じだ。 式が始まるまで少し時間がある。 というわけで、私はいつもの屋上へと足をのばしていた。 ガチャ… 屋上の扉を開ける。 するとそこには案の定千尋がいた。 チヒロ「…來弥か。」 シノ「うん。まだ時間あるし、読もうと思って。」 そういって私が千尋に見せたのは 「時計仕掛けの林檎と蜂蜜と妹」。 私も千尋も読んでいるラノベシリーズだ。 チヒロ「…やっぱりな。」 フッと笑って千尋が私に見せたのも同じラノベだった。
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