黒と白

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シラユキ「……不審者?」 ゼン「あぁ。最近街で見掛けられるらしい。」 クラリネス王宮に、そんな噂が流れて来たのは冬も近い秋終わりの頃だった。 フードを深く被っていて顔は分からないらしいけど、長い漆黒の髪を持つ人らしい。 シラユキ「大丈夫、なの?」 ゼン「たぶんな。今オビに見に行かせてる。白雪も、街に出るなら気を付けろよ。」 また私絡みじゃないかと心配になる私の頭を、ゼンは笑顔で撫でた。 ガヤガヤ オビ「おっと、そこのお嬢さん?」 女「はい?」 オビ「最近街で見慣れない人見なかった?」 城下町。ゼンの従者であるオビは情報を集めるべく奔走していた。 女「…すみません。」 オビ「んや、知らないならしょうがない。ごめんね。」 しかし、情報は一向に集まらない。 オビ「収穫無しで帰ったら主に叱られるし…ハァ…どうすっかな…。」 オビは当てもなく人気の無い裏通りをぶらついていた。 すると、 シラユキ「…あれ、オビ?」 オビ「っ!?…なんだ、お嬢さんか。」 真っ赤な髪の少女、白雪が現れた。 背後から声を掛けられ一瞬身構えたオビは、それが白雪だと気付き安堵する。 オビ「俺は主に言われて動いてるけど、お嬢さんは?」 シラユキ「私はここを抜けた先の野原へ薬草を摘みに。」 彼処にしか無いんだ、と苦笑する白雪。 そして彼女は目的地へと向かうべく歩き出した。 後ろにオビを連れて。 シラユキ「…何で着いてくるのかな?」 オビ「情報集まらないし、お嬢さんに着いてく。」 警護、みたいな? とオビは笑った。 <野原> 黒雪side フードからはみ出ている髪を、爽やかな風が弄んで通り過ぎる。 この野原は、私がクラリネスに立ち寄った時に、ゼンと始めて出会った場所。 良き友人となった私達は、良く此処で遊んだものだ。 イザナに見付かった時はゼンが王子だと知って吃驚したっけ。 それに、此処には此処にしか無い薬草がある。 可愛い妹…白雪にも教えてあげたかったな…。 クロユキ「……白雪…会いたいな…」 ビュオッ ?「キャッ…!」 ?「ぅわっ。」 一際強い風が花弁を巻き上げるのと同時にした声に、私は無言で身構えた。 クロユキ「……………え?」 ?「あれ、先客かな?」 ?「というか不審者だろwww」 眼に飛び込んできたその赤。 艶やかな林檎のような、私の大好きな赤。 エメラルドの様な緑の瞳。 間違いない。 私は、思わず駆け出した。 クロユキ「白雪…っ……!!」 ギュゥッ シラユキ「………え?」
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