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白雪side
貴重な薬草を採るため、野原に来た私とオビ。
そこにいた先客らしきローブの人は、私を見るなり駆け出して、抱き締めた。
私の名前を呼んで。
シラユキ「え、っと、あの、」
クロユキ「白雪…ごめんね……!!」
オビ「え、お嬢さんの知り合い?」
知り合い、では無いと思う。
思うけれど、横目に見える漆黒の髪と、優しい声には覚えがあって。
昔…ずっとずっと昔に私はこの人と会っている、気がする。
うぅん、会ってる。
[白雪!!]
[私の瞳と白雪の髪はお揃いだね。]
[………ごめんね、白雪。]
ぼんやりとした記憶が鮮明になり、私の中に一人の大切な人を確立させる。
無意識の内に、私はその名前を呼んでいた。
シラユキ「………姉、さん?」
クロユキ「うん…うん…!!白雪…ごめんね…!!」
ビュオッ
2度目の突風がフードを取り去って、長い漆黒の髪と真紅の瞳が現れた。
10年前と変わらない、姉さんの姿姉さんの優しい声。
気付けば私の頬を涙が伝っていた。
オビ「………黒髪のお嬢さん。主が、ゼン殿下がお呼びですので、共に来ていただけますか?」
クロユキ「…そっか。私、不審者だよね。どう見ても。わかりました、着いていきますよ。」
オビの言葉にコロコロと笑った姉さんは、私を放してオビの手を取った。
……不審者、っていうのは、姉さんだから…しょうがないよね。
そして、私達は王城へと向かった。
<王城> ゼンside
コンコン
オビ「主、オビです。」
ゼン「入れ。」
書類作業も一段落し、剣の稽古でもしようかと思い始めた時、オビが戻ってきた。
入れると、後ろに女性が一人いた。
ゼン「オビ、後ろの女性は?」
オビ「えぇですね、何を隠そうこの女性が、不審者って訳ですよ。」?「わっ!?」
と言いながら、女性を前に出すオビ。
その顔をみた瞬間、俺の中で、一つの記憶が蘇った。
ゼン「く、黒雪!?」
クロユキ「…久し振り、ゼン。」
オビ「主も知り合いですか!?」
長い漆黒の髪。
紅玉の如き真紅の瞳。
ずっと昔、ふらりとクラリネスに立ち寄り、見事に俺の心を奪っていった旅人、黒雪その人だった。
ゼン「黒雪、お前一体今まで…!!俺がどれだけ心配したと思って…!!」
クロユキ「……ごめんね。でも、ゼン?」
ゼン「何だよ!?」
黒雪は俺の腕を引っ張って、その腕の中に収めた。
クロユキ「おっきくなったね。安心した。」
ゼン「………っ!!///」
オビが、目を丸くしている。
あぁ…悪い。お前を放置しているな…。
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