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とあるホテルの一室。
ソファーに座った着物の青年、8番目の真祖、椿は鼻歌まじりに足をぶらつかせていた。
ベル「どしたのつばきゅん?ちょーゴキゲンじゃーん!!」
ヒガン「面白いことでもあったかい?」
ツバキ「うん、珍しい天使ちゃんに会ったんだー♪」
天使、といえばヒガンの頭に浮かぶのは強欲の主人たる青年だが、椿が面白いのならば違うだろうと彼は椿に訪ねた。
ヒガン「天使ちゃん?」
ツバキ「そ、とーっても珍しい、唯一無二の翼人の下位吸血鬼♪面白いよねぇ。」
「「「はぁっ!?」」」
周りで話を聞いていただけの椿の下位達も、流石に反応せざるを得なかった。
それを見て、本当に面白そうにクスクスと笑う椿。
笑いが治まると、椿は雲1つ無い空を見ながら同じ色のマフラーをした少女を思い出した。
<回想>
ツバキ「♪」
椿は白い羽織を靡かせて、建物の屋根から屋根へと跳んでいた。
涼しい風が心地よく、鼻歌まじりに駆けていると、
?「そこのキミ、避けてぇぇっ!!」
ツバキ「っは!?」
前方から突っ込んでくる少女一人。
あまりの唐突さとその速さに椿は身動きできず、
ドーーン
少女の頭は、椿の鳩尾にクリーンヒットした。
?「わぁぁぁ!?ごめんなさいっ!!僕、瓦に躓いちゃってっ!!」
ツバキ「…いや、まぁ大丈夫だけど…君…」
?「…あ、えと僕はハイネ。お察しの通り翼人です。」
ツバキ「あはははは!!凄い凄い!!僕、翼人に会ったの初めてだよ!!」
笑い出す椿を不思議そうに見るハイネ。
そんな彼女に、椿は羽織から黒い二又狐のぬいぐるみを差し出した。
ツバキ「これあげるよ。僕は椿。吸血鬼の真祖だよ♪じゃ、また会ったら遊ぼうね、ハイネ。」
ハイネ「あ、可愛い…♪ありがとー、椿。今度は主人も紹介してねー♪」
ツバキ「……君…!!…まぁ、いいや…じゃあね。」タンッ
そう言って椿は路地裏に降りていった。
が、ハイネの人懐こく笑む口の隙間に鋭く尖った牙を見逃してはいなかった。
誰の下位かなぁ?
まぁ、"強欲"か"色欲"の兄さんだろうけど。
…あはははははは、はははぁははははっあははぁ…あー……面白くない。
あの娘、もう誰かのものなんて。
あー面白くない。
ヒガン「翼人の下位ねぇ…創りそうなのって"強欲"か"色欲"っぽいな?」
ベル「だよねぇ~!?目立ちやがってぇ…腹立つなぁ!!」
ツバキ「やっぱりヒガンは頭いいね。あはは、また会いたいなー♪」
そんな会話を聞きながら、緑髪の少年は密かに部屋を出た。
おそらく頭を抱えているであろう親友の姿を想像しながら。
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