愛しかった日々へ

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クロロ「見つかりましたよ。」 ソフィ「そうですか……。」 クロロ「貴女です。ソフィアーナ嬢。」 ソフィ「…………っ!!」 ソフィアーナ嬢の瞳がさらに見開かれる。 この手の冷たさといい…部屋といい…。 ……長い間監禁されていたのか? クロロ「……大丈夫。もう大丈夫です。私は貴女を救い出す為に来たのですから。」 ソフィ「………屋敷の人々は、どうしたんですか?」 クロロ「……殺してはいません。気絶してもらっているだけです。」 外に倒れている使用人を見て、瞳を揺らす彼女を安心させるよう、できるだけ穏やかな声で話す。 すると安心したのか、手の震えが止まった。 ソフィ「………クロロさん、私の話を、聞いていただいてもよろしいですか?」 クロロ「えぇ。喜んで。」 サファイアの瞳が俺の顔を映す。 吸い込まれてしまいそうだ。 そして彼女はポツポツと話始めた。 ソフィ「私は、ジエチル族です。ジエチル族は念能力の扱いにとても長けていました。私も使えます。住んでいたのが山奥だったため、人はあまり来ず、幸せでした。そんなある日、1人の少年が迷いこんできました。彼はカイル、と名乗りました。当時彼と同い年だった私は親友となり、彼が自分の家へ戻るのを手伝っていました。そして、ようやく森の出口を見つけ、彼は何度もお礼を言って帰っていきました。[ジエチル族は悪い人じゃないって言っとくよ!!]。そう言って。でも…でも!!」 ソフィアーナ嬢は手を強く握り締める。爪が食い込んでいる。 俺はその手をそっと包んだ。 俺の手に、涙が2つ落ちた。
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